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2008年12月10日 / misotukuri

シャーリィ・ジャクスンの「くじ」を読む-8

 昨夜は「もちろん(Of Course)」、「塩の柱(Pillar of Salt)」、「大きな靴の男たち(Men with Their Big Shoes)」を読んだ。
あと残り少なくなってきたが、もう一息だ。
「もちろん(Of Course)」は、シャーリィ・ジャクスンのお馴染みのテーマである理解不能の「他者との遭遇」のひとつだろうか?
SFにも「最初の接触(ファースト・コンタクト)」テーマがあるが、良い結末に終わるのは珍しいというか、甘いと見なされる。
この小説の主人公タイラー夫人は、お隣に新しい住人が引っ越ししてきた日、隣のよしみを結ぼうとするのだが、新しい一家はなかなかハイブラウなようで、・・・
タイラー夫人は、好意に溢れた無防備さで近づいたのだが、その奥さんと話をしているうちに、うっかり車を凍結した道路に乗り入れてしまったときのような不安を覚える。
お隣の家に引っ越してくる人たちなのだから、経済的にも社会的にも人種的にも年齢的にも自分らと同じ世界に住む同類だろうと勝手に思い込んでしまったのだ!
よくある失敗だ。
教育上、自分の子供に何々させない親というのがいる。
私らが子育てしていた頃は、テレビを見させない、かな?
今では、ネットだろうか?
だが、私は思うのだ。
社会性を育むためにも、子供達には子供達の同世代としてのつながりが必要だと。
そうしないと、本当に時代から超絶した孤独な人間が出来てしまう。
親の偏った人生観を子供に押しつけてはならないのだ。
まあ、ユニークな人間を造りたいのなら話は別だけどね。
 「塩の柱(Pillar of Salt)」は、比較的長い、本格的な短編だ。
聖書のロト記に退廃の限りを尽くしたソドムとゴモラの町が神の怒りに触れて破壊される話がある。
善人ロトの一家だけ事前にお告げがあり逃げるのだが、決して振り返るなと警告されていたにもかかわらず、ロトの妻のみ振り返って見たところ、一瞬にして塩の柱と化してしまう。
これは何を象徴しているのだろうか?
ロトの妻はソドムとゴモラの退廃的な生活に後ろ髪を引かれるものがあったのだ。
だから振り返って見た。
しかし、聖書の神は非寛容で、そういう女は許せなかったということなのだろう。
では、それとこの短編の女主人公はどのように結びつくのだろうか?
友人夫妻が旅行中のアパートの留守番を兼ねて念願のNY見物に出かけた田舎の金物屋夫婦のマーガレットとブラッド。
見るもの聞くもの物珍しくて楽しくて、あっという間に1週間過ぎたが、都会の人の多さと慌ただしさ、互いに無関心で希薄な人間関係、事故や事件など危険に溢れていることなどに次第に疲れが出てくる。
田舎のネズミと都会のネズミ現象だな。
そして、マーガレットは、もう、今日はどこへも行かない、一日ゆっくり休養するわ、と宣言して一人アパートに残ったのだが、・・・・
これは環境不適応からくるフォビア(恐怖症)だが、それは罰なのだろうか?
ロトの妻が、立ちすくむ塩の柱にされるというのは神から下された罰だが、この短編の主人公はどこがいけなかったのだろうか?
罰を下されるべき理由が思い当たらないのだが。
あるいは、ロトの妻の運命に見られるように神の無慈悲なまでの非寛容さが問題なのだろうか?
よく分からない。
 「大きな靴の男たち(Men with Their Big Shoes)」。
今度は前の話と逆に、都会のネズミが田舎のネズミになる話だ。
妊娠中の新婚生活を田舎で始めたハート夫人は、都会暮らしをしていた頃、思い描いていた夢が実現して、しごく満足の日々を送っていたが、いつのまにか家政婦として通ってくるようになった近所の女の口に悩まされるようになる。
ハート夫人の恐怖は、粗野な欲望のままに行動できる田舎の人間たちへのものだ。
しかし、読者である私はこう思う。
仮に田舎で生活していた繊細なハート夫人が都会で妊娠期の新婚生活を始めたら、都会生活に馴染めなくて「塩の柱」のマーガレットのように強迫神経症を起こすだろう。
問題は都会か田舎かではなくて、あくまでその人の内面にある。
シャーリィ・ジャクスン自身はどうか知らないが、彼女の描く女性の主人公は、どれもこれも内気で繊細で、一言で言えば、か弱すぎる。
どうやら、この短編集もコンセプトが見えてきたようだ。

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