コンテンツへスキップ
2011年11月14日 / misotukuri

悪いのはいつも亀田なのか?

WBAスーパー・フライ級の王座を巡って騒動が起きている。

その事情は前にも書いたので、今日は割愛するが、またぞろ正義と良心の代弁者みたいな顔をしてアンチ亀田ファンが悲憤慷慨しているのにはいい加減うんざりする。

最近のWBAやWBCが筋の通らぬおかしなことばかりしているのはわかっているが、まず、本質的なところから、話を整理してみようではないか。

WBA(World Boxing Association 世界ボクシング協会)というのは、プロボクシングの王座認定団体の最老舗で、元々は、NBA(National Boxing Association 全国ボクシング協会)と称していた米国の団体。

これがプロボクシングのビジネスのグローバルな展開によって、全世界に広がって行くのだが、ことはそう簡単ではなく、1963年にWBC(World Boxing Council 世界ボクシング評議会)が米国主導に反発した英国、ヨーロッパ、東洋、ラテンアメリカなどの地域王者認定団体によって創設された。

以後、同じ階級の世界王者がWBAとWBCの2人いる体制がしばらく続いた。

WBAは、1974年パナマ人の会長が選任されて以降、米国主導から中南米主導の団体へと変わっていく。

これに我慢できない米国勢は、1983年に現在のヒルベルト・メンドサ(ベネズエラ)会長が選出されたのをきっかけに、WBAを脱退して、IBF(International Boxing Federation 国際ボクシング連盟)を設立した。

さらに、1988年にWBAの会長選挙をきっかけに、カリブ地域と米国有力プロモーターがWBO(World Boxing Organization 世界ボクシング機構)を設立し、現在は、世界王座認定団体としては、WBA,WBC,IBF,WBOの4団体が主要団体として一般的に認知されている。

だから、今は、同じ階級で世界王者が4人いる勘定になる。

以上は、王者に限ったことだが、この他に暫定王者(Interim Championship)という制度がある。

暫定王者制度は、WBC,WBA共にあり、王者が怪我や病気などが理由で長期的に防衛戦ができない場合、その制裁措置として上位ランカー同士による王座決定戦を行い、その勝者を王者とする制度。

WBAは近年暫定王者を乱発しまくって、すっかり、評判を落としている。

「暫定」という肩書きこそあるが、正規王者と立場的には何ら変わらないものであり、むしろ、正規王者には暫定王者との王座統一戦が義務づけられており、指定期間中に統一戦が行われない場合、暫定王者が正規王者として認められる場合もある。

この他に、スーパー王者制度もあるが、長くなるのでこれくらいにしておこう。

とまあ、あっちこっちからコピペしたが、これらのことから、見えてくるのは、全ては興行のためだということだ。

自分の都合のいいように、必要とあらば、認定団体まで新たに創設して、世界王者を認定する。

暫定王者だって、世界タイトルマッチと唱えば、皆がよりたくさん儲けられるので、何のかんのと理由をつけて乱発する。

所詮は、そーいうものだ、ということを、解らなければいけない。

今回の問題は、JBCがWBAの暫定王座は認めないとしたことに原因がある。

清水が正規王者になる前から、テーパリットは暫定王者だった。

筋から言えば、前の正規王者カサレスは暫定王者テーパリットとの王座統一戦を優先すべき事情にあった。

去る8月31日カサレスから王座を奪った清水は、当然、テーパリットとの統一戦をしなければならないが、試合後、右眼窩底骨折が判明し、休養状態に入った。

このことによって、暫定王者テーパリットの正統性というか、有理性は高まったと言っていい。

清水の骨折は完治し、まもなく、練習再開できる状態らしく、このまま行けば3月にも防衛戦を行えるとか。

だが、ビジネスとしてのボクシングは、そこまでテーパリット側としては待てない。

そこで、一悶着あったが、組まれたのが亀田大毅との暫定王者戦。

ところが、JBCはWBAの暫定王座は認めないと決めたから、当然、暫定王座戦もまかりならない。

しかし、そんなこと言ってたら、ボクシングという興行(ビジネス)は成り立たない。

下部団体であるJBCの言うことなど、無視しても良いのだが、今後のことを考えると、そうもいかない。

というわけで、清水の休養王座認定、テーパリット正規王者昇格という手を考え出した。

これなら、正規王者の世界戦であり、JBCも認定しないわけにはいかない。

ようするに、そもそも、ボクシングというビジネスでやっていることなのに、JBCがWBAの暫定王座は認めないなどとゴネたのが悪いのだ。

もっとも、休養王者認定といっても、亀田側が言っているだけで、正式にWBAから清水側に文書は来てるのか?

JBCがWBAの暫定王座戦も認定するから、清水の休養王者認定は待って欲しいと言えば済むことじゃないか。

興行あってのJBCだろ?

根本に立ち返らなければいけないのは、どっちだ?

<追伸2011.11.15>

昨日のSANSPO.COMによれば、WBAからJBC(日本ボクシングコミッション)に清水を休養王者とする旨の正式通達が来た模様だ。

JBCは、清水側が気にしていた、正規王者と休養王者の扱いについて、序列はないとの見解を示した。

清水が所属する金子ジムの金子会長は、これによりWBAへの提訴などは「今は考えない」と話した。

JBCも、自分がまいた種は自分で刈るしかなかったのだろう。

問題は、正規王者となったテーパリット、そして挑戦者亀田大毅の勝者が、復帰した清水休養王者との統一戦をどう扱うかだ。

それによっては、また一悶着も二悶着もあろう。

しかし、いずれにせよ、興行的には面白くなってきたと思う。

純粋にボクシングだけを考えれば、今のスーパー・フライ級で清水に勝てそうなのは、WBOのオマール・ナルバエスは別格として、先日、名城信男が挑戦して敗れたWBCの王者スリヤン・ソー・ルンヴィサイぐらいだろう。

テーパリットはスリヤンに敗れているし、大毅もあの亀田ファミリーに共通のスローなボクシングでは、スピードがあって手数の多い清水やスリヤンには、苦戦するのではないか?

まあ、清水もテーパリットや大毅のボクシングをじっくり見ておいて、統一戦の作戦を考えた方が得策と思うが。