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2012年10月1日 / misotukuri

「連環宇宙(VORTEX)」読書中-暗く異様な未来のユートピア

久しぶりにSFを読んでいる。

ロバート・チャールズ・ウィルスンの「連環宇宙(VORTEX)」だ。

これは、「時間封鎖(SPIN)」、「無限記憶(AXIS)」に続くシリーズ三部作の完結編。

私としては、「無限記憶」の大団円の後、まだこの上に続編が出来るとはとても思えなかったが、何とやっちゃいましたね。

驚いたよ、もう。

まだ、ちょうど半分より少し手前まで読んだだけなのだが、小説の構成としては、現代(と言ってもスピン封鎖解除後だから、2012年の現在からは数百年後と思う)の話と1万年後の未来の世界の話を交互に繰り返していく形式となっている。

スピンが何かと言うことについては、シリーズの最初から読まないとわからないだろうから、パスしてくれ。

いずれにしても、人類にとってはかなり未来のお話が語られている。

第二部の「無限記憶」で、行方不明の父を捜していた主人公のリーサ・アダムスを助けているうちに、彼女と恋仲になってしまったターク・フィンドリーが出てくるので期待しておくれ。

それにしても、作者が描く1万数百年後の世界というのは、なかなか暗く異様なものだね。

テクノロジーはもちろん発達しているが、政治的にはそれほどでもない。

もっとも政治的には、我々だってサルとほとんど変わらないから、まあ、そんなものかもしれないな。

作者と似ていると言われるグレッグ・イーガンの描く未来社会でも感じたことだが、人間の身体への改変のすさまじさに驚かされる。

まあ、しかし、現代でも自力では心臓が打たなくなった人に心臓ペースメーカーを身体に埋め込んだりしているのだから、さほど驚くには当たらない事なのかもしれないが。

SFガゼットでは、いくら使っても瓶の中で自己増殖する薬とか、他人の精神をネットワークからダウンロードしてインストールした後で、本来の自分のアイデンティティを見失わないようにする薬とか、なかなか面白いのが出てくる。

J・P・ホーガンの「マルティプレックスマン」では、そういう薬がなかったばかりに混乱が生じたわけだなと気がついた。

これは現代アメリカ社会への風刺なのだろうが、精神疾患を抱えた患者の社会復帰リハビリテーション・センターを建設しようとしたら、「わが家の近所には作るなという住民エゴの猛反発に遭ってことごとく頓挫した」なる文章が出てくるところも面白い。

いずこも同じだね。

となると、暗くて異様なのはいつの世もそうなのかと思えてくる。

1万数百年後の未来(と言っても、これまた、スピンのおかげで、天文学的にはほぼ50億年後の事なのだが、あくまで人類の主観的歴史時間で言えばの話だ。)の政治体制は、大きく分けて2つの勢力に分けられている。

1つは、「大脳皮質系」民主主義グループで、大半の国家群がこれに当たる。

もう1つは、「大脳辺縁系」民主主義グループで、ターク・フィンドリー達が再生後連れて行かれたヴォックスもそのグループに入る。

「大脳皮質系」民主主義とか「大脳辺縁系」民主主義と言っても、チンプンカンプンだろうが、ちょうど100ページ目にその説明があるから、よく読んでくれ。

ただでさえ長々しいブログなので、引用は最小限に止めよう。

「早い話が、皮質系の国民は、全員で同じ理屈を考えるけど、辺縁系の国民は、全員が同じことを感じるわけね」と言うことだ。

ここに至って、このSF小説の狙いははっきりしてきたね。

これは、どちらもようするに民主主義が向かおうとする究極の姿であるからして、明らかに民主主義に対するディストピアを描こうとしている。

大脳をネットに直結するインターフェイスがまだ実現していない時代の我々の現代では、議論を尽くして合意形成を計りましょうなどと言っている人間達は「大脳皮質系」民主主義者の原始人だと言える。

また、小泉純一郎や橋本徹などのポピュリズムの使い手に熱狂する人間達は「大脳辺縁系」民主主義者の原始人だと言えるのではないかな?

ヴォーテックスに拉致されたターク・フィンドリーは、何となく、リバタリアンみたいだけどね。

また、1万数百年後の未来では、地球は現代の地球上の全生物はほぼ死滅しているようだが、そのきっかけは環境汚染となっている。

ところで、その環境汚染の原因というのが、これまた、三部作を読んでもらわないとわかりにくいのだが、何と、私が常々みなさんに警告していることとほとんど同じ事だったので、驚いた。

まあ、オールドSFファンなら誰しも同じ結論に達するわけで、これまたまた、驚くには当たらないことだったのかも。

となると、このSF三部作は、将来21世紀初頭に登場したSFの金字塔と言われるようになるかもしれないね。

そんな予感がする。

だがもう、オレは人類の愚劣さにほとほと愛想が尽きかけているんだ。

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