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2013年6月9日 / misotukuri

「イスタンブールの群狼」読了-イェニチェリの亡霊

「イスタンブールの群狼」(ジェイソン・グッドウィン著)読了した。

着手から読了まで45日も掛かったが、一つにはページ数は文庫本で530頁とそれほどでもないのに132章もあって、読みやすいことは読みやすいのだが、1,2章読むといかにも一区切り読んだような気になってしまい、読んでは中断を繰り返していたからだ。

どうやらこの本、英国ディケンジアン誌に連載されていたようで、章が極端に多いのは、そのせいかもしれない。

この小説、2006年のMWA長編賞(エドガー賞)受賞作品であり、これで2000年代(2000年~2009年)歴代MWA長編賞受賞作のうち未読なのは、S・J・ローザンの「冬そして夜」を残すのみとなった。

この「イスタンブールの群狼」は、19世紀末のオスマントルコ帝国の首都イスタンブールで起きたイェニチェリ復活を思わせる怪事件をスルタン・マフムド2世の白人宦官ヤシムが探偵となって捜査する歴史ミステリ。

歴史ミステリは、舞台が自国であれ他国であれ、ミステリそのものよりもそこに描きだされる風物情緒に一層の興味を覚える。

この「イスタンブールの群狼」もそう。

宦官、ハレム、スルタン、イェニチェリ、イスタンブールの都市機能、そこに住む住民の生活や当時の国際的、内国的な政治情勢等々。

最近の猪瀬東京都知事の失言にもかかわらずトルコは親日国として有名だが、日本人はトルコのことをあまりよく知らない。

いつぞやサッカーのW杯でトルコと戦い力負けしたことがあるが、日本人の庶民レベルではその時初めてトルコという国に関心を寄せたのではないだろうか?

この本を読めば、トルコの歴史にとどまらず、世界の三大料理の一つ、トルコ料理にも関心が生まれるだろう。

宦官にも2種類あるというのは初めて知ったね。

司馬遷の場合は、どちらだろうか?

ハレムとかトルコ風呂については、ドミニク・アングルの絵画のイメージが強いが、そういうものではないというのも語られている。

また、イェニチェリは、イェニ(新しい)・チェリ(軍隊)という意味で、元々は帝国の支配地域から強制連行して連れてきた異民族の人間によって構成された帝国の最強軍団だったとか。

イェニチェリ軍は、世界で初めて軍楽隊を持って、兵隊の士気を鼓舞するために勇壮な行進曲を演奏した。

日本でもNHKのTVドラマ「阿修羅のごとく」で使われたので、曲を聴けば、あああれかと思い出すだろう。

http://www.youtube.com/watch?v=kpOl4kxgD1c

モーツアルトの「トルコ行進曲」もこれに想を得たらしい。

http://www.youtube.com/watch?v=7a_KUdpjzxA

ぜひ両方聴き比べて欲しい。

モーツアルトもいいけど、歌詞がついて歌うとなると行軍するときには、やっぱりイェニチェリの行進曲がいいかなあ。

暗殺者とのアクション場面もいくつかあって、特ににかわ工場での追跡戦と聾唖者のオイル・レスラー相手の場面はヴィヴィッドで絵になる。

ラブシーンも普通のはないのだが、なるほどと思わせる。

ところで、肝心のミステリだが、ひょっとしてこのミステリ、フーダニット三原則(?)に外れる作品じゃないか?と思ったが、最後にはきっちり原則どおり収まっていた。

見事なミスディレクションだったと思う。

 

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