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2014年12月6日 / misotukuri

映画「ゼロ・グラビティ」のプロ・アマ度

 今年171本目の映画「ゼロ・グラビティ(Gravity)」(13年、米・英、アルフォンソ・キュアロン監督、サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー)を見たところ。
 去年大ヒットしただけある。思ってたより面白かった。これなら娘に誘われたときに見に行ってりゃ良かった。
 しかしまあ、こういう単純なストーリーをよく1時間46分も退屈させずに見せたもんだと感心する。
 途中で色々なSFを思い浮かべた。
 ジョージ・クルーニーのマット・コワルスキー大佐が、沈着冷静に自らの命綱を切り離すシーンでは、ラリイ・ニーヴン&ジェリー・パーネルの「悪魔のハンマー」に出てくる元宇宙飛行士を思い出した。
 また、サンドラ・ブロックのライアン・ストーン博士が、事故で通信途絶になったヒューストンと何とか連絡しようとしていると、地上のどことも知れないところの無線で遊んでいる人と偶然交信できるようになって、無駄に他愛ない、だが、宇宙空間で独り死を目前に控えた人間には本当に貴重に思える感傷的な会話をしている場面では、レイ・ブラッドベリの「万華鏡」が頭に浮かんだ。
 コワルスキー大佐は、聞き飽きたジョークを平気で何度も繰り返す男だが、彼は紛う方なきプロの宇宙飛行士で、ストーン博士は、その都度マニュアルが必要な所詮はアマの宇宙飛行士。
 それが途中で、プロは心ならずもミッションの成功をアマに託して、自らはお先に果てていかねばならない。
 「いかねばならぬ 男がひとり いかせたくない 女がひとり・・・」
 一緒にいってと言うのはいつも女の方。
 ところで、あなたは、相手がいくのを見届けてからいくタイプですか?
 何の話じゃ?こんなブログ読んでる人は少ないだろうし、ボクたちみんな大人ですから・・・まあ、いいか。
 これはセックスの話でも「城ヶ崎ブルース」の歌詞でもない。
 ようするに、死地に臨んだときの「理性の象徴」と「感情の象徴」のサバイバルのお話だ。
 映画では、「理性の象徴」(=プロ)が男、「感情の象徴」(=アマ)が女(ライアンという男みたいな名前だが)という設定となっているが、これは実は一人の人間のことであって、左右の大脳のような側面を男と女に振り分けてドラマ化しただけのことだろう。
 その方が、大衆にはわかりやすいからな。
 そういう作劇上のテクニックはともかく、映画には、こういうパターンのお話って、結構ある。
 「エグゼクティブ・デシジョン」でも、強面のプロの特殊部隊長スティーヴン・セガールがハイジャックされたB747にステルス機から乗り移ろうとするときにトラブルが起きて、やむなくミッションをアマの某大学教授であるカート・ラッセルに託して死んでゆくというシーンが初めの方にあった。
 映画を見ているこちらとしては、当然、主役のセガールがハイジャック犯をバッタバッタとなぎ倒していくんだろうと思ってた矢先に、あっさりと犠牲になって舞台から消えていくので、しばらく呆然となったものだ。
 「Navy S.E.A.Ls」だったか、題名を忘れたが、指揮官が地雷か投げ込まれた手榴弾かの上に身を投げて仲間を救うシーンとか、ようするにベンサムの最大多数の最大幸福という効用の原理を、たとえ我が身が犠牲になる場合でも、とっさに実践できるというのがプロ。
 このように、プロは最後の最後まで冷静沈着に努力する一方、避けられぬ死を悟ると平然と死んで行く事が出来る。
 もちろん、死ぬのは一度きりのことだが。
 だいたいやね、人間、死ぬときは死ぬのだよ。
 それを、死ぬのはイヤだと泣きわめいたら死なずに済むのなら、誰だってそうするぜよ。
 だが、そんなことは決してないのであり、単なる酸素や時間の無駄遣いにすぎない。
 いつまでも、過ぎ去った過去の過ちを後悔して自責の念に浸るのもまた同じ。
 そんなことより、あなたが今一番しなければならないことをきちんとすることがより大事なのだ。
 その中途で死があなたを捕まえても、それはそれでいたしかたないこと。
 ということを、プロのコワルスキー大佐はジョークを交え、アマのストーン博士にあれこれ指示しながら、「生還するんだぞ」と言い残し、自らは宇宙遊泳時間の決して破られることのない更新記録達成を目指して(もちろんジョーク)漆黒の宇宙空間に消えてゆく。
 これでアマのサンドラ・ブロック扮するストーン博士が、コワルスキー大佐の託した思いにもかかわらず、一向に生還の努力をしようともせず、うじうじとくじけきってお馬鹿にも死んでしまうなら、ホラー映画にはなるかも知れないが、娯楽アクション映画にはならない。
 感傷に浸りながらも、無意識のどこかではコワルスキー大佐の叱咤で生還への方策を考えており、幸運も手伝い、間一髪のところで何とか生還を果たすのだ。
 プロの冷静に確率計算された「理性」よりも、アマのとにかく生き残りたいという「感情」の方が、サバイバルには大事という教訓か。
 「理性」がなければ生き残れない。「感情」がなければ生き残る値打ちがない。
 オオッ、レイモンド・チャンドラーだな。
 うーん、宇宙飛行士も大変なお仕事だねえ。つくづくそう思った。
 では。

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