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2015年8月13日 / misotukuri

映画「テイク・シェルター」の貯蓄性向0の狂気度

3日前に見た映画「テイク・シェルター」(11年、米、ジェフ・ニコルズ監督、マイケル・シャノン、ジェシカ・チャスティン他)は、傑作と言うほどではないが、なかなかよく出来ていた。
あらすじをWikipediaのコピペしたものをちょこっといじって紹介すると、
「オハイオ州の工事現場で地盤の掘削作業を仕事としているカーティスは、献身的な妻のサマンサと難聴の障害を持つ娘と親子三人、裕福ではないが平凡で幸せな生活をしていたが、ある日、巨大な竜巻が彼らの住む街を襲う悪夢にうなされる。
悪夢は毎晩続き、竜巻と共に降る油のような赤い雨、そしてその雨に濡れて理性を失った人々に、自身や娘が襲われるリアルな内容に、 彼は次第に脅迫観念に捕らえられ、家を担保に変額ローンを組み、欠勤し、会社の重機を無断使用して庭に巨大なシェルターを作り始める。
彼の常軌を逸した行動に、家族や親友や近所の人たちや会社の仲間達は、次第に異常性を感じ始める。
カーティス自身もこの悪夢は、妄想型の統合失調症を患いかれこれ20年以上も入院している母の病気が遺伝したのかもと悩み続ける。
一方、妻の奔走で、それまで高額でとても出来ないと思っていた娘の人工内耳手術が会社の健康保険を使って安く受けられることになった矢先、彼は仕事を解雇されてしまう。
それでも、彼は憑かれたようにシェルターを掘り続ける。
彼はとうとう狂気に走ってしまったのか?それとも、彼の言うように、本当にこれまで見たこともない巨大な竜巻が襲ってくるのか?
そんなある日、本当に嵐がやって来て、彼は妻子共々作りかけのシェルターにあわてて避難したのだったが・・・」
この映画、いきなり主人公の悪夢から始まるせいか、一緒に見ていたかみさんが「これって、ホラーでしょ?」と何度もしつこく聞くので、始めの内は「初めて見るのに知るか!」と返事していたものの、いつの間にか私もこれは多分、ホラーかSFパニックものだろうと見当をつけて身構えながら見ていたのだった。
ところが、いくら待っても、一向にその気配がないのだ。
主人公の悪夢と並行してアメリカの平凡だが幸せそうな一般的下流家庭の日常風景がいつまでも淡々と描かれて行くばかり。
だが、途中でそうかなるほどと気がついたのだが、そのことによって、主人公の悪夢の原因になりそうな色々な背景が徐々に明らかにされてくるのだ。
これはなかなか緻密なテクニックだが、エンターテインメントの手法ではないね。
シリアス・ドラマの手法だ。
実に見事なのだが、まるで映画の教科書みたいな感じがする。
こういうのは、あんまり見事に組み立てられていると観客はワンカットも見逃せず、見ていて疲れるのが欠点だ。
かみさんは例によって居眠りしながら見ていたので、ほとんどこの映画の良さが理解出来ていないと思う。
しかし、映画のストーリーはともかく、何気ない描写の中に見逃せないいくつかの興味深い社会学的な論点があると思う。
まあ、下世話な話ばかりなので、あまり挙げたくないのだが、少しだけ例を挙げると、まずアメリカの庶民の貯蓄性向の低さに驚くよ。
日本人の感覚からすると大きな家に住んでいるくせに、多分、貯金は0何だろうな。
奥さんが内職して儲けたお金を家族旅行の資金に貯金箱に入れて貯めているシーンを見て、カツカツの生活ぶりがよくわかる。
普通にこういう人間ばっかりじゃあ、サブプライムローンで破綻するのも無理ないな。
また、日本なら結婚しようかと思っている相手の母親が精神疾患を患っているなんて聞けば、一気に冷めてしまうものだが、アメリカではそういうのは気にしないんだね。
主人公が妻に内緒に入院中の母親のところへ行ったことのワケを「ほら、ウチの母親がアレだろう?」と告白すると、「それなら、あたしも一緒に行ったのに」と精神病のことなど何とも思っていないようだ。
きっと、愛さえあれば、何事も共に乗り越えられると思っているのだろうな。
まあ、愛がなくなれば、ハイさようならなのだろうが、何と人間として立派なんだろうと思ってしまう。
もっとも、娘の難聴の原因が自分の側にあると思っているからかもしれない。
・・・などと考えたら、いやらしくなるが、真実の探求者はそれに耐えなければいけない。
途中で、奥さんに頼まれて、彼の様子を心配して見に来た7歳年上の兄さんが出てくる。
アメリカ映画でここまでしっかり長男的長男が描かれているのを見たのは「ゴッド・ファーザー」以来だ。
このシーンなんかも単にストーリーを走らす映画なら何の意味もないと思うが、リアリティを濃密にするのには貢献している。
実は私は、ハーバード大学のサンデル教授の教室に詰めかけた学生のほとんどが第一子だったことを知って、第一子、第二子、第三子に特徴的に見られる性格的傾向について、形成に社会的なものがあるのではないかと考えているのだ。
まだまだ他にもさりげない描写で「ホホウ!」と思わされるのが一杯あって興味が尽きないのだが、誰も関心ないだろうから、ここらでやめておく。

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