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2017年8月7日 / misotukuri

ロマチェンコとゾウ・シミンの違い

 入院していた間に期待カード3試合を見逃し、退院後、ネットで動画を探しまくり、今日、ようやく2試合見ることができた。
1 WBO世界スーパー・フェザー級タイトルマッチ
  ワシル・ロマンチェンコVSミゲル・マリアガ(7R終了TKOでロマチェンコの防衛)
2 WBO世界フライ級タイトルマッチ
  ゾウ・シミンVS木村翔(11RTKOで木村がタイトル奪取)
 この2試合を見て、ロマチェンコ(Vasyl Lomachenko)とゾウ・シミン(雛市明Zou Shiming)の差というか、違いを感じてしまった。
 共にオリンピック2連覇(北京、ロンドン)で、ロマチェンコは「ウクライナの至宝」、ゾウ・シミンは「中国の大英雄」と呼ばれるスーパー・スター。
 ボクシング・スタイルは、サウスポーとオーソドックスの違いはあるが、共にスピード抜群で、ノーガードで自在にパンチを繰り出し、大抵のボクサーはそのスタイルに翻弄されてしまう。
 二人がプロになってからこれまでに負けた相手が一人だけで、それがまた共にくせ者。
 ロマチェンコの場合はオルランド・サリド、ゾウ・シミンの場合はアムナット・ルエンロンというボクシング・ファンなら誰でも知っているプロ転向間もない者には難しい相手。
 果たして、サリドはWBOフェザー級チャンピオンだったが確信犯的体重オーバーでタイトル剥奪され、タイトルよりロマチェンコに勝つことを重視した。
 サリドのぐじゃぐじゃファイトにさすがのロマチェンコも水際だったテクニックを見せられず、判定負けしてプロ2戦目での世界タイトル奪取という新記録はならなかった。
 ゾウ・シミンが躓いた相手、一足先にプロに転向してIBFフライ級チャンピオンになっていたアムナットは、アマ時代に井岡一翔やこのゾウ・シミンにも勝っており、プロのIBF世界フライ級チャンピオンになってから、二人の挑戦を受けたが返り討ちにした。
 アムナットとゾウ・シミンの試合は見ていないが、アムナットに井岡が挑戦した試合は見た。
 井岡は完敗だった。
 ボクシング・スタイルは共によく似ていて、距離を取って打っては後に引くスタイル。
 ただし、アムナットはしたたかで、初回から猛攻を仕掛け、井岡を完全に守勢に追い込むや、あとは本来の引くボクシングに変わった。
 すると、劣勢の井岡は本来のスタイルではないにも関わらず、前に出なければならなくなって、完全にルエンロンの術中にハマってしまった。
 しかも、生い立ちがアウトローで、そういうプロレスまがいの反則すれすれのあくどさがボクシングでも出ており、これは井岡程度では何度やっても、勝てないなと思ったものだ。
 ゾウ・シミンも難しいだろうなと思っていたら、案の定、勝てなかった。
 そして、その後、プロの水に慣れてきたロマチェンコもゾウ・シミンも念願の世界タイトルを手にし、この度のタイトル防衛戦になった。
 ロマチェンコの相手、ミゲル・マリアガ(Miguel Marriaga)は、世界タイトルに一歩足りない実力者で、負けた相手が、ニコラス・ウォータース(ノニト・ドネアをKOしている)、オスカル・バルデス(東洋無敵の大沢 宏晋をKOしている)という超一流のチャンピオンだけ。
 ロマチェンコはそのニコラス・ウォータースを子ども扱いにしてKOしているので、マリアガも難しいだろうと思っていたが、やっぱりそうなった。
 ウォータースほどではなかったが、マリアガは数発しかロマチェンコにパンチを当てられず、後退するばかりで、全く一方的な試合だった。
 ロマチェンコは、圧倒的なスピードの差で距離を詰めることによって、短いリーチという体格面の不利を補い、ネコがネズミをなぶり殺しにするようにマリアガを痛めつけた。
 こういう戦い方を見ていて、思ったことが2つ。
 一つは、リーチが短いくせに同じように接近しながら相手には打たせず好きなように強打を打ち込むスタイルは、まるでダニー・ガルシアみたいだなということ。
 もう一つは、ロマチェンコと既に引退しているがフロイド・メイウェザーとがやったらどうだろうかと言うことだ。
 私はメイウェザーのボクシングは買わない。
 確かにテクニックは比較を絶する超一流だが、それ程差があるのに、では何故KOしないのかという点がどうしても高く評価できないところだ。
 ロマチェンコはテクニックやスピードはメイウェザーに遜色ない。
 しかも、ディフェンシブなメイウェザーと違って、アグレッシブで必ず仕留めようとする。
 これはウエイトさえ合えば、絶対面白い試合になる。
 無敗のまま引退したメイウェザーを負かせるのは、ロマチェンコしかないような気がする。
 ところで、ゾウ・シミンと木村翔の試合は、木村の大番狂わせの逆転KOと報道されているが、私の採点では、10Rまでで96-94で木村の勝ちと見た。
 1Rから木村はゾウ・シミンのボディーにターゲットをしぼり、ゾウ・シミンの年齢(36才)を考え、プレッシャーをかけて追い回し、スタミナを奪う作戦で行っていた。
 ゾウ・シミンは、モハメド・アリのようにくるくる舞って、ノーガードから華麗に木村にパンチを打ち込んだ。
 だが、ポイントこそゾウ・シミンのものだったが、3Rに木村の明らかに効いたボディー・ブローが一発決まり、ゾウ・シミンのスピードがガクッと落ちた。
 3Rのポイントはともかく、4Rからはボディーが再三決まり、そのたびにゾウ・シミンは手打ちのパンチにスピードと力がなくなり、全くの猫なでパンチになってしまった。
 6Rに木村は右上瞼をカットし、少しトーンダウンした以外は、8Rまでポイントを重ねた。
 ラウンド終了後に見所のリプレイがリング上のスクリーンに映し出されるが、だんだん、ゾウ・シミンのパンチが当たるところより、木村の攻勢シーンが多くなった。
 ゾウ・シミンは、採点はともかく、これではいけないと思ったのだろう、9Rに攻勢を仕掛け、一方、木村のパンチは当たらなかったので、9Rは明らかにゾウ・シミンが取った。
 だが、それでゾウ・シミンはスタミナを使い果たしたのか、10Rは木村の一方的な攻勢となり、ゾウ・シミンは力なく、後退を続けるばかりとなった。
 そして、11Rとうとう木村はゾウ・シミンを捕まえ、左ボディー・ブローから右ストレートの連打でダウンを奪い、そのままファイティング・ポーズを取れなかったゾウ・シミンはレフェリー・ストップされてしまった。
 ゾウ・シミンの欠点は、モハメド・アリと違って、パンチ力に欠けるところで、パンチ力がもう少しあれば、あんなに逃げ回らず、ロマチェンコのように前に出て、相手をKOすることができるのだが、あれでは相手は少々打たれても大丈夫と前に出てくるのを止められない。
 木村は、パンチの打ち方が基本に忠実で、ボディー・ブローなど一発の効き具合がゾウ・シミンの2倍くらい違った。
 これは、木村の作戦勝ちで、事前にゾウ・シミンをよく研究した結果と言える。
 だが、相手にもよるが、木村はあくまで中堅選手といった感じなので、短命王座だろう。
 井岡一翔などと戦って、ボロ負けして、WBOの権威を落とすくらいなら、負けるにしても外国人と戦って散った方がいい。
 ゾウ・シミンはもう2才若ければ、木村など最後まで寄せ付けなかったと思う。
 木村を甘く見ていたと思うので、再戦すれば、あるいはタイトルを取り戻せるかもしれない。
 借金王の木村は、せいぜいファイトマネーを高くつり上げることだ。
 ロマチェンコとゾウ・シミンの違いは、これから王座統一戦を目論む者と功成り名遂げた感ありありの者のモチベーションの差、そして、リーチが短いという体格的ハンデを克服するためスピードをアグレッシブに使い接近戦を挑む者と、スピードがあり体格的ハンデもないが打たれることに耐えるより距離を取ってディフェンシブに戦おうとする者の違いかな。

 <追伸 2017.08.08 スコア・カード>
 (A)ロベルト・ホイル、(B)サワエン・タウィクーン、(C)エドワルド・リガス
 ゾウ・シミンの側から見て、1Rから10Rまで、〇=10点、-=9点
 (A)-〇-〇-〇---〇 94-94・・・買収されているが、良心的な採点
 (B)〇〇〇-〇--〇〇- 96-94・・・買収されているが、そうと見せない巧妙な採点
 (C)〇〇〇-〇〇--〇〇 97-93・・・買収が露骨すぎる採点
 ついでに、私の採点を挙げておこう。
 (私)〇〇---〇--〇- 94-96・・・3Rはともかく、これが公平な採点だろう
 とにかく、94-94というのが、結果的には公平な採点だと思うが。
 ボディー・ブローを有効打とするかしないかの判断は、ボクサー上がりのジャッジでなければわからないのだろうと思う。
 ゾウ・シミンは再戦を希望しているようだが、ダイレクト・リマッチは難しい上、再戦して、もしまた木村に負けるようなことがあれば、ゾウ・シミンの名声は地に落ちるので、このまま興行権を売り渡し、引退する方が良いと思う。
 早いラウンドでKOされた場合は、再戦で勝つ可能性は大いにあるが、11Rまで来てKOされたような場合は、再戦で勝つ可能性は五分五分だろう。
 私は、木村とは相性が悪いということで、止めた方が良いと思う。 

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