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2017年8月22日 / misotukuri

映画「ヴィジット」の悲劇の克服度

 退院してから、映画を5本見たが、今夜の映画「ヴィジット」(15年、米、M・ナイト・シャマラン監督、キャスリーン・ハーン、ディアナ・デュナガン、ピーター・マクロビー、エド・オクセンボールド、オリビア・デヨング)は、最近のサスペンス・ホラーとしては出色の出来だな。
 <離婚した母親がボーイフレンドと休暇を過ごす間、長年、音信不通だった祖父母からのたっての願いでペンシルバニア州メインビルにやってきた15歳と8歳の姉弟は、優しい祖父と料理上手な祖母に迎えられ、田舎町での穏やかな1週間を過ごすことになった。
 母親が19歳で父親と駆け落ちするまで育ったその家は、林に囲まれた古くて大きな農家だったが、毎晩、夜9時半を過ぎると家の中には異様な気配が漂い、不気味な物音が響き渡るのだった。
 恐怖を覚えた2人は、祖父から決して開けてはいけないと言われた部屋のドアを開けてしまうが、そこで見たものは驚愕の・・・・だった!>
 ミステリ・ファンなら、ちょっと見ただけでネタはわかってしまうのだが、そんなことはどうでも良いくらいのサスペンスで、これはスゴイね。
 サスペンスというのは、そんなことしたらこうなるんじゃないかという恐怖の予感と期待だ。
 徐々に高まっていく主人公達の恐怖が見る者に伝染してくる。
 恐いものは最初は何だかわからないくらいチラッと見せるのが恐さを増幅させる。
 そういう恐さもさることながら、シャマランの映画では、「ヴィレッジ」以来の感動ものだ。
 何?
 サスペンス・ホラーで感動???
 そう、オレはこういうのに弱いんだ。
 克服という奴に。
 両親の離婚で深い傷を負った子供たちが一つの事件をきっかけにそれぞれが自分と向き合い、PTSDを克服していくという話だろ、これは。
 では。

2017年8月21日 / misotukuri

ミゲール・コット VS 亀海喜寛を予想する(結果付き)

8/27、WBO世界Sウェルター級王座決定戦、ミゲール・コット VS 亀海喜寛が米国である。
日本人ボクサーが米国でこれほどの大物と戦うのは、これが初めての快挙だ。
ミゲール・コットと言えば、ボクシング・ファンなら知らぬ者のない元四階級制覇チャンピオンで、戦歴はまばゆいまでに光り輝いている。
おデブちゃんだったのでダイエットでボクシングを始めたところ、なかなかセンスがあるということで、ボクサーになるや連戦連勝。
早くから将来有望株として嘱望され、WOWOWエキサイトマッチに初登場した時には、新人のくせにもうボクサーとして完成されているのに驚いたものだ。
スピードがあって、コンビネーションが打てて、防御に巧みで、パンチ力がある。
体格的なアドバンテージはそれ程なかったが、適正なウェイトで、小さくまとまらなければ、必ず世界チャンピオンになれる器だった。
その後、浮き沈みはあったがついに四階級を制覇した。
これまでの有力選手との戦歴を見ると、
1 ランドール・ベイリー(〇TKO)
2 デマーカス・コーリー(〇TKO)
3 ポール・マリナッジ(〇判定)
4 カルロス・キンタナ(〇TKO)
5 ザブ・ジュダー(〇TKO)
6 シェーン・モズリー(〇判定)
7 アントニオ・マルガリート(✕TKO)
8 マニー・パッキャオ(✕TKO)
9 リカルド・マヨルガ(〇TKO)
10 アントニオ・マルガリート2(〇判定)
11 フロイド・メイウェザー(✕判定)
12 オースティン・トラウト(✕判定)
13 サウル・アルバレス(✕判定)
このうち、5 ザブ・ジュダー、6 シェーン・モズリーに勝ったのは、よく勝てたなと思う。
これぞ、超一流の証だ。
初黒星の相手、8 アントニオ・マルガリートは、コットに勝てるとしたら、8 パッキャオや11 メイウェザーや13 アルバレスのように全ての面でコットを上回っているのでなければ、もうこれしかないという勝ち方でコットをやっつけた。
そしてこれは、マルがリートの最高傑作だろう。
どんな戦い方をしたかというと、壮絶な肉弾消耗戦だ。
マルがリートは体格の有利と無類のタフネスの有利をフルに生かし、徹底的に耐えた。
やがて、打っても打っても、一向に倒れないマルガリートにコットは、打ち疲れてしまった。
モハメド・アリがジョージ・フォアマンを破ったキンシャサの奇跡、”ロープ・ア・ドープ”とはまた違ったやり方だが、打ち疲れたコットは、マルガリート以上に消耗していた。
消耗戦というのは、味方の損害を度外視した、とにかく敵を殲滅することを目的にした戦法だ。
消耗の絶対量から言えば、最初から打たれっぱなしのマルガリートの方が多かっただろうが、キャパシティが違っていた。
コットのスタミナが底を突いた時、マルガリートのスタミナはまだ少し残っていた。
スタミナが0になると、ボクサーは突然、動けなくなる。
マルガリートは、それを虎視眈々と狙っていたのだ。
亀海は客観的に見てコットより勝っているのは、年齢とスタミナと体格だけと思うので、マルガリートみたいな肉弾消耗戦を仕掛ければ、あるいは勝つチャンスもあるのではないかと思う。
今週末が楽しみだ。
大番狂わせの亀海の終盤KO勝ちを期待したい。
では。

2017年8月12日 / misotukuri

愚か者と愚か者とが対立するとき何が起きるか?

 ちょうど「影武者 徳川家康」(隆慶一郎著)を読んでいるところだが、そのなかでまったく同じだなと思える話があった。
 それは徳川家康(もちろん替え玉)が、何とかして秀頼を助命しようと策を講じ続けるのだが、淀殿と二代将軍秀忠という二人の愚か者がその努力を空しくしてしまうというところだ。
 淀殿は女のプライドそして秀忠は劣等感のかたまりなのだが、秀忠は執念深く豊臣家の滅亡と用済みとなった替え玉の家康の始末を狙って淀殿を挑発し続ける。
 これって、軍事力を逆にすれば、淀殿=トランプ、秀忠=金正恩だな。
 共に共通点は、軍事的にバカということ。
 普通は、お互いに「やるぞ、やるぞ」と言っている時は、戦争は起きない。
 むしろ、ののしりあいを一瞬止め静かになったときが危ない。
 これが、いわゆる常識。
 ところが、こういう常識が通用しない場合がある。
 それは、互いが愚か者の場合だ。
 今、北朝鮮状勢は、常識が通用しない局面に入っている。
 では。 

2017年8月9日 / misotukuri

映画「大列車作戦」-勝者は人命大事派かそれとも芸術大事派か?

 昨夜、映画「大列車作戦」(64年、米、ジョン・フランケンハイマー監督、バート・ランカスター、ポール・スコフィールド、ジャンヌ・モロー他)を見た。
 何十年ぶりなのでストーリーを完全に忘れていたが、薄っぺらいCG特撮ばやりの今日から見ると、このホンモノを使ったド迫力・重厚感というのは、一眼レフとコンデジの画質の違いのように、やっぱり全然違うね。
 蒸気機関車の何ともたまらないこの重量感、B-25ミッチェルと覚しき双発爆撃機、迷彩を施した装甲機関車の物々しさ、ぞんざいに扱っても爆発しないプラスティック爆弾、そして、爆発より怖い曲射砲弾が飛んでくる音・・・
 今とは貨幣価値の違う時代に、このホンモノを惜しげなく使うという巨費を投じると、これだけスゴイ映画が出来るのだなと思う。
 今日では到底無理だろうし、ジョン・フランケンハイマーほどのスケールの大きい豪腕監督もいなくなった。
 本質的にチマチマとくだらないこと(だって、そうだろう?)をしっとりと情感たっぷりに描いてハイ感動作ですというような軟弱監督やそれに震えるように感動するアホな観客ばかり。
 バート・ランカスターが橋の上を走って逃げるところ脚を銃撃されるシーンがあるが、これも銃撃ではないが実際に怪我をして痛みをこらえながらアクションしたという瓢箪から駒の真に迫った演技もスゴイ。
 オイル菅にコインを挟むとか、鉄道における妨害工作もホントに色々あるもんだね。
 また、ナチスの将校の中にも鉄道に詳しい者がいて、(まあ、当然だが)改めて、鉄道と戦争との関わり合いを思い出させた。
 戦闘で鉄道が使われたのは、南北戦争の頃が最初だと思うが、なかなか有効だったようだ。
 第二次世界大戦では、ソ連がシベリア鉄道を機関車と貨車を往復させず、極東へ送りっぱなしにしたという戦史上有名な話がある。
 これなども「兵は拙速を聞くも、未だ巧久なるを賭(み)ざるなり」を地で行く用兵の基本なのだが、責任者にくだらないことに捕らわれない軍事的センスがなければまずできないこと。
 現代の鉄道の利用法は、ミサイルの運搬、発射に使われるのは、北朝鮮の例でもおわかりと思う。
 鉄道が発達したヨーロッパでは、第二次世界大戦中はフランスのレジスタンスが「鉄路の戦い」を繰り広げたことでも有名だ、
 鉄道の前は、陸運では大量輸送は難しく、海運が使われた。
 これらのことから、伝統的に運輸というのは、国家権力が許認可権を絶対に手放さない分野だということがおわかりになろう。
 そういう理解が政治学の常識なのに、国民のほとんどはそれをわかっていない。
 この映画もフランス政府、鉄道当局の全面的強力があって初めて完成したと言える。
 この映画のネタは、ナチス・ドイツが敗色濃厚となった頃、フランスの沢山ある美術館から総額10億マルク相当の絵画を秘密裏にドイツに運ぼうとした企てを、フランス鉄道のレジスタンスのラビッシュ(バート・ランカスター)などが命を貼って阻止したという話だ。
 史実ではないと思うが、似たようなことは、ナチス・ドイツの支配下にあったところで実際あったわけで、戦争歴史秘話として通用する話だ。
 それはそれで「フォン・ライアン特急」的に鉄道を使った痛快戦争アクション映画にもできたと思うが、やはり、ジョン・フランケンハイマー監督の手にかかると、これが「人命か芸術か」という難しい問題設定を掲げ、考えさせられることになる。
 ルノワール、マネ、ドガ、マチス、ミロ、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ、ピカソ、ブラック・・・等々の絵は人間の命に換算するとどれくらいに値するか?
 あなたは今までそんなこと考えたことがおありだろうか?
 絵画を知らない人間には愚問に等しいが、知れば知るほど超難問になる。
 その命、例えば、あなたやあなたの愛する人の命だったとしたら?
 この絵画強奪作戦を企てたナチスの将校フランツ・フォン・ワルトハイム大佐(ポール・スコフィールド)は、「10個師団(6万人~20万人)に相当する」とうそぶいた。
 仏レジスタンスは、ド・ゴール大佐(将軍、後の大統領)の「絵画はフランスの誇りであり魂だから絶対に奪還せよ」という命令に、レジスタンス全員、奮い立つ。
 レジスタンスと言っても無教養な庶民ばかりで、そんな絵画など生まれてこの方まだ一度も見たことがないにもかかわらずだ。
 一人醒めているのは、何より人命が大事と考えるラビッシュだけ。
 最後に、ワルトハイム大佐は 事敗れて、それを邪魔したラビッシュと対決するのだが、その時の名台詞が「絵画はそれがわかる者のためにあるのだ」というもの。
 そして、人命大事派のラビッシュは、命令のため絵画を無傷で取り戻したものの失われた100人をはるかに超える人命を思い、無言のまま大佐を射殺する。
 これは「人命」大事派が「芸術」大事派に勝ったというような話ではない。
 大佐を射殺したのは、人命など絵画一枚の価値にも及ばないという事実へのせめてもの抗議のあらわれなのだ。
 ラビッシュのような実務一辺倒で獣にも等しい無教養な人間に、絵画のことなどさっぱりわからないのだが、男というものは、自分の命に替えてでも守らなければならないものがあると信じて行動するものなのだ。
 絵画はフランスの誇りであり、魂であると言われれば、それを見たこともないものであろうと、フランス人である自分一箇の命など少しも惜しくもないという男ならではの精神の高揚が起きて、その人を死への行動に突き動かす。
 だが、絵画は実際のところ誰のものなのだろう?
 確かに「美はそれがわかる者のためにある」のだろうが、少なくともそれはワルトハイム大佐だけのものではないということだ。
 先日、お亡くなりになった大女優ジャンヌ・モローの冥福を祈る。
 では。

2017年8月8日 / misotukuri

山中慎介VSルイス・ネリを予想する(結果付き)

 来る8/15(火)WBC世界バンタム級タイトルマッチ、山中慎介 VS ルイス・ネリの試合が近づいてきたので、予想してみよう。
 まず、最初に、両者のデータ比較から。
 山中:34才、サウスポー、身長171cm、リーチ177cm、29戦27勝(19KO)2分け、KO率66%
 ネリ:22才、サウスポー、身長、リーチ共に不明、23戦23勝(17KO)、KO率74%
 ネリの身長、リーチが現時点では不明だが、恐らく、身長は165cm前後、リーチは175cm前後
だろう。
 <2017.8.12 追伸>
 (予備検診でネリの身長165cm、リーチは167cmとわかった。身長は予想どおり。リーチは予想ほどはなかったが、あえて多めの予想をしていたので、外れた気はしない。メキシカンは意外とリーチは短いのが多い)
 山中のV13がかかる試合で、これに成功すれば、具志堅用高の日本記録13度連続防衛に並ぶことになる。
 山中の王座獲得から12度連続防衛のこれまでの軌跡をふり返って見よう。
 2011.11.06 11RTKO クリスチャン・エスキベル(メキシコ)WBC世界バンタム級王座獲得
 2012.04.26 12R判定(3-0) ビック・ダルチニアン(豪)WBC王座防衛V1
 2012.11.03 7RKO  トマス・ロハス(メキシコ)WBC王座防衛V2
 2013.04.08 12RTKO マルコム・ツニャカオ(比)WBC王座防衛V3
 2013.08.12 1RKO ホセ・ニエベス(プエルトリコ)WBC王座防衛V4
 2013.11.10 9RKO アルベルト・ゲバラ(メキシコ)WBC王座防衛V5
 2014.04.23 9RTKO シュテファーヌ・ジャモエ(仏)WBC王座防衛V6
 2014.10.22 12R判定(3-0) スリヤン・ソールンビサイ(タイ)WBC王座防衛V7
 2015.04.16 7RKO ディエゴ・サンティリヤン(アルゼンチン)WBC王座防衛V8
 2015.09.22 12R判定(2-0) アンセルモ・モレノ(パナマ)WBC王座防衛V9
 2016.03.04 12R判定(3-0) リボリオ・ソリス(ベネズエラ)WBC王座防衛V10
 2016.09.16 7RTKO アンセルモ・モレノ(パナマ)WBC王座防衛V11
 2017.03.22 7RTKO カルロス・カールソン(メキシコ)WBC王座防衛V12
 この中で、最初の山はビック・ダルチニアンだった。
 そして、次はスリヤン・ソールンビサイ、アンセルモ・モレノ1、リボリオ・ソリスと続き、最後の一山が、またしてもアンセルモ・モレノ2だった。
 彼らは、もう少し何かがあれば、山中からタイトルを奪取できただろう。
 それくらい、出来が良かった。
 ビック・ダルチニアンは、もう少し、スピードがあれば。
 スリヤン・ソールンビサイは、もう少し背が高ければ。
 アンセルモ・モレノ1は、もう少し積極性があれば。
 リボリオ・ソリスは、もう少しラッシュできていれば。
 アンセルモ・モレノ2は、もう少し慎重にやれば。
 さて、今度のV13の相手ルイス・ネリ(Luis Nery)だが、ランキング1位の最強挑戦者。
 彼に上記4人の足りなかった点が備わっていれば、恐るべき挑戦者と言える。
 そもそも、山中には他団体のチャンピオン(WBAルーシー・ウォーレン、IBFライアン・バーネット、WBOゾラニ・テテ)を除くと、相手になりそうなのは彼しかいないのだ。
 他団体のチャンピオンでは、ゾラニ・テテが一番強そうだ。
 もしも、ルイス・ネリに勝つことができたら、次はゾラニ・テテとやって欲しい。
 だが、それよりも、当面の相手、ルイス・ネリだが、黒人的特徴を有するメキシカンで、身体が柔らかく、いわゆるメキシカンのイメージとは全然違う。
 タブゴン戦では、攻勢に出た時に顔面がガラ空きになってカウンターを食らいダウンするシーンもあったが、直近の試合では多少は用心するようになっている。
 ネリは、アンセルモ・モレノと同じくショルダーブロック気味に相手の攻撃を大きく身体を後に反らして避けるので、山中の一発目のパンチは当てようとしてもまず当たらない。
 山中はモレノ2であと5cmを如何にして詰めるかということで学習したことを生かすべきだ。
 ネリがモレノ2同様に初回から積極的に出てくれば、勝敗は別にして、モレノ2と同様の試合展開になるだろう。
 山中はネリがモレノよりも若くてスピードがあってパンチも強いことを計算に入れておく必要がある。
 V12を目指した内山高志がコラレスの奇襲に2RKO負けしたことの教訓を忘れてはならない。
 特に、ネリの左フックを如何に封じるか。
 そして、うるさい右ジャブを容易に出せなくする手段を講じる必要がある。
 ネリは攻撃的なので、放って置いても向こうから接近してくる。
 どちらが勝つにせよKO決着だろうと思うが、得てしてそういうときは、判定に終わるかもしれない。
 山中は、優勢になれば無理にKOを狙うより、勝ち抜くことを優先すべきだろう。
 予想としては、ズバリ、12R判定で山中だろう。
 山中はそれ程器用なボクサーじゃないので、ネリのスピードになかなか対応できないだろうからだ。
 
<2017.8.15 結果速報>
 4RTKOでネリが新チャンピオンになった。
 山中はV13日本記録タイに並べなかった。
 タオル投入が早かったが、仕方がない。
 途中脚が引っかかって山中がバランスを崩したところ、ネリのラッシュにより、クリーンヒットはそれ程もらっていないが、防戦一方となり、体制をやや立て直した直後、ネリの左ストレートがクリーン・ヒット。
 あとはロープに詰められ、左右フックのラッシュを浴び、タオル。
 敗因は色々あろうが、私は強い右ジャブを当てに行ったのがいけなかったと思う。
 結構当たったので、これは行けると思ったのだろう。
 油断したね。
 私の3Rまでの採点は、1R山中、2R山中、3Rネリだった。
 試合前から、内山の時と同じく、いろいろ嫌なことが多かったね。

2017年8月7日 / misotukuri

ロマチェンコとゾウ・シミンの違い

 入院していた間に期待カード3試合を見逃し、退院後、ネットで動画を探しまくり、今日、ようやく2試合見ることができた。
1 WBO世界スーパー・フェザー級タイトルマッチ
  ワシル・ロマンチェンコVSミゲル・マリアガ(7R終了TKOでロマチェンコの防衛)
2 WBO世界フライ級タイトルマッチ
  ゾウ・シミンVS木村翔(11RTKOで木村がタイトル奪取)
 この2試合を見て、ロマチェンコ(Vasyl Lomachenko)とゾウ・シミン(雛市明Zou Shiming)の差というか、違いを感じてしまった。
 共にオリンピック2連覇(北京、ロンドン)で、ロマチェンコは「ウクライナの至宝」、ゾウ・シミンは「中国の大英雄」と呼ばれるスーパー・スター。
 ボクシング・スタイルは、サウスポーとオーソドックスの違いはあるが、共にスピード抜群で、ノーガードで自在にパンチを繰り出し、大抵のボクサーはそのスタイルに翻弄されてしまう。
 二人がプロになってからこれまでに負けた相手が一人だけで、それがまた共にくせ者。
 ロマチェンコの場合はオルランド・サリド、ゾウ・シミンの場合はアムナット・ルエンロンというボクシング・ファンなら誰でも知っているプロ転向間もない者には難しい相手。
 果たして、サリドはWBOフェザー級チャンピオンだったが確信犯的体重オーバーでタイトル剥奪され、タイトルよりロマチェンコに勝つことを重視した。
 サリドのぐじゃぐじゃファイトにさすがのロマチェンコも水際だったテクニックを見せられず、判定負けしてプロ2戦目での世界タイトル奪取という新記録はならなかった。
 ゾウ・シミンが躓いた相手、一足先にプロに転向してIBFフライ級チャンピオンになっていたアムナットは、アマ時代に井岡一翔やこのゾウ・シミンにも勝っており、プロのIBF世界フライ級チャンピオンになってから、二人の挑戦を受けたが返り討ちにした。
 アムナットとゾウ・シミンの試合は見ていないが、アムナットに井岡が挑戦した試合は見た。
 井岡は完敗だった。
 ボクシング・スタイルは共によく似ていて、距離を取って打っては後に引くスタイル。
 ただし、アムナットはしたたかで、初回から猛攻を仕掛け、井岡を完全に守勢に追い込むや、あとは本来の引くボクシングに変わった。
 すると、劣勢の井岡は本来のスタイルではないにも関わらず、前に出なければならなくなって、完全にルエンロンの術中にハマってしまった。
 しかも、生い立ちがアウトローで、そういうプロレスまがいの反則すれすれのあくどさがボクシングでも出ており、これは井岡程度では何度やっても、勝てないなと思ったものだ。
 ゾウ・シミンも難しいだろうなと思っていたら、案の定、勝てなかった。
 そして、その後、プロの水に慣れてきたロマチェンコもゾウ・シミンも念願の世界タイトルを手にし、この度のタイトル防衛戦になった。
 ロマチェンコの相手、ミゲル・マリアガ(Miguel Marriaga)は、世界タイトルに一歩足りない実力者で、負けた相手が、ニコラス・ウォータース(ノニト・ドネアをKOしている)、オスカル・バルデス(東洋無敵の大沢 宏晋をKOしている)という超一流のチャンピオンだけ。
 ロマチェンコはそのニコラス・ウォータースを子ども扱いにしてKOしているので、マリアガも難しいだろうと思っていたが、やっぱりそうなった。
 ウォータースほどではなかったが、マリアガは数発しかロマチェンコにパンチを当てられず、後退するばかりで、全く一方的な試合だった。
 ロマチェンコは、圧倒的なスピードの差で距離を詰めることによって、短いリーチという体格面の不利を補い、ネコがネズミをなぶり殺しにするようにマリアガを痛めつけた。
 こういう戦い方を見ていて、思ったことが2つ。
 一つは、リーチが短いくせに同じように接近しながら相手には打たせず好きなように強打を打ち込むスタイルは、まるでダニー・ガルシアみたいだなということ。
 もう一つは、ロマチェンコと既に引退しているがフロイド・メイウェザーとがやったらどうだろうかと言うことだ。
 私はメイウェザーのボクシングは買わない。
 確かにテクニックは比較を絶する超一流だが、それ程差があるのに、では何故KOしないのかという点がどうしても高く評価できないところだ。
 ロマチェンコはテクニックやスピードはメイウェザーに遜色ない。
 しかも、ディフェンシブなメイウェザーと違って、アグレッシブで必ず仕留めようとする。
 これはウエイトさえ合えば、絶対面白い試合になる。
 無敗のまま引退したメイウェザーを負かせるのは、ロマチェンコしかないような気がする。
 ところで、ゾウ・シミンと木村翔の試合は、木村の大番狂わせの逆転KOと報道されているが、私の採点では、10Rまでで96-94で木村の勝ちと見た。
 1Rから木村はゾウ・シミンのボディーにターゲットをしぼり、ゾウ・シミンの年齢(36才)を考え、プレッシャーをかけて追い回し、スタミナを奪う作戦で行っていた。
 ゾウ・シミンは、モハメド・アリのようにくるくる舞って、ノーガードから華麗に木村にパンチを打ち込んだ。
 だが、ポイントこそゾウ・シミンのものだったが、3Rに木村の明らかに効いたボディー・ブローが一発決まり、ゾウ・シミンのスピードがガクッと落ちた。
 3Rのポイントはともかく、4Rからはボディーが再三決まり、そのたびにゾウ・シミンは手打ちのパンチにスピードと力がなくなり、全くの猫なでパンチになってしまった。
 6Rに木村は右上瞼をカットし、少しトーンダウンした以外は、8Rまでポイントを重ねた。
 ラウンド終了後に見所のリプレイがリング上のスクリーンに映し出されるが、だんだん、ゾウ・シミンのパンチが当たるところより、木村の攻勢シーンが多くなった。
 ゾウ・シミンは、採点はともかく、これではいけないと思ったのだろう、9Rに攻勢を仕掛け、一方、木村のパンチは当たらなかったので、9Rは明らかにゾウ・シミンが取った。
 だが、それでゾウ・シミンはスタミナを使い果たしたのか、10Rは木村の一方的な攻勢となり、ゾウ・シミンは力なく、後退を続けるばかりとなった。
 そして、11Rとうとう木村はゾウ・シミンを捕まえ、左ボディー・ブローから右ストレートの連打でダウンを奪い、そのままファイティング・ポーズを取れなかったゾウ・シミンはレフェリー・ストップされてしまった。
 ゾウ・シミンの欠点は、モハメド・アリと違って、パンチ力に欠けるところで、パンチ力がもう少しあれば、あんなに逃げ回らず、ロマチェンコのように前に出て、相手をKOすることができるのだが、あれでは相手は少々打たれても大丈夫と前に出てくるのを止められない。
 木村は、パンチの打ち方が基本に忠実で、ボディー・ブローなど一発の効き具合がゾウ・シミンの2倍くらい違った。
 これは、木村の作戦勝ちで、事前にゾウ・シミンをよく研究した結果と言える。
 だが、相手にもよるが、木村はあくまで中堅選手といった感じなので、短命王座だろう。
 井岡一翔などと戦って、ボロ負けして、WBOの権威を落とすくらいなら、負けるにしても外国人と戦って散った方がいい。
 ゾウ・シミンはもう2才若ければ、木村など最後まで寄せ付けなかったと思う。
 木村を甘く見ていたと思うので、再戦すれば、あるいはタイトルを取り戻せるかもしれない。
 借金王の木村は、せいぜいファイトマネーを高くつり上げることだ。
 ロマチェンコとゾウ・シミンの違いは、これから王座統一戦を目論む者と功成り名遂げた感ありありの者のモチベーションの差、そして、リーチが短いという体格的ハンデを克服するためスピードをアグレッシブに使い接近戦を挑む者と、スピードがあり体格的ハンデもないが打たれることに耐えるより距離を取ってディフェンシブに戦おうとする者の違いかな。

 <追伸 2017.08.08 スコア・カード>
 (A)ロベルト・ホイル、(B)サワエン・タウィクーン、(C)エドワルド・リガス
 ゾウ・シミンの側から見て、1Rから10Rまで、〇=10点、-=9点
 (A)-〇-〇-〇---〇 94-94・・・買収されているが、良心的な採点
 (B)〇〇〇-〇--〇〇- 96-94・・・買収されているが、そうと見せない巧妙な採点
 (C)〇〇〇-〇〇--〇〇 97-93・・・買収が露骨すぎる採点
 ついでに、私の採点を挙げておこう。
 (私)〇〇---〇--〇- 94-96・・・3Rはともかく、これが公平な採点だろう
 とにかく、94-94というのが、結果的には公平な採点だと思うが。
 ボディー・ブローを有効打とするかしないかの判断は、ボクサー上がりのジャッジでなければわからないのだろうと思う。
 ゾウ・シミンは再戦を希望しているようだが、ダイレクト・リマッチは難しい上、再戦して、もしまた木村に負けるようなことがあれば、ゾウ・シミンの名声は地に落ちるので、このまま興行権を売り渡し、引退する方が良いと思う。
 早いラウンドでKOされた場合は、再戦で勝つ可能性は大いにあるが、11Rまで来てKOされたような場合は、再戦で勝つ可能性は五分五分だろう。
 私は、木村とは相性が悪いということで、止めた方が良いと思う。 

2017年8月6日 / misotukuri

「古城ゲーム」のコン・ゲーム度

 「大鴉の啼く冬」読了後、すぐには本格的な小説は読む気がしなかったので、いかにも軽そうな「古城ゲーム」(ウルスラ・ポツナンスキ)を手に取ったが、予想どおり会話中心の軽いお話だった。
 これはジュニア小説みたいなノリで、中世騎士物、本格ミステリ物、ゴシック・ホラー物、迷路クエスト物、青春恋愛物等々、巧妙に仕組まれたコン・ゲームであり、意外性の連続に一気に2日で読み上げてしまった。
 アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」を中世コスプレ・ゲームでやればこうなるという怪作だ。
 ストーリーを紹介すれば面白さが半減するので、解説など先に読まず、さっさと本文に取りかかることをオススメする。
 なかなか凝った作りになっていて、描写の一つ一つに意味があるので、念のため。
 では。